家族内の暴力、つまり、DV(パートナーからの暴力)、子ども虐待、高齢者虐待はしばしば世代間を超えて連鎖し、同時発生します。このような現象を家族の多重暴力(Family Poly-victimization)と言い、被害者が加害者となったり(その逆もある)、非常に複雑で混沌とした問題です。家族の多重暴力が発生している場合、単一の暴力だけの介入では、その家族の根本的な解決につながらず、暴力がエスカレートし、一番弱い立場の家族員(子どもなど)が命を落とすケースもあります。そのため、家族の多重暴力の予防・終結に向けて、各暴力の専門性の垣根を超えた支援体制の構築が不可欠と考えています。このような思いから、家族の多重暴力の研究を進めています。

■ 家族の多重暴力を測る尺度の開発
家族の多重暴力を簡易的に測ることができる尺度、日本語版Family Poly-victimization Scale (FPS-J)を開発しました。これは私の5年にわたる共同研究者であるEdward Chan Ko Ling氏(香港理工大学)が開発した尺度を日本語版にしたものです。この尺度は、18歳未満の子どもを持つ親を対象に、家族内のDV、子ども虐待、高齢者虐待の有無とその多重性について、17項目で簡易に測ることができる尺度です。2020年に483名の親に行った家族の多重暴力に関するアンケート調査で、日本語版FPSの妥当性を確認しました。



[論文]
Kita S, Baba K, Motegi-Iwasaki R, Kishi E, Kamibeppu K, Malmedal KW, Chan KL. (2023). Development of a Japanese version of the Family Poly-victimization Screen. International Journal of Environmental Research and Public Health, 20(4), 3142.